北海道物産展で知られる企業から、
北海道に根付いた企業を目指して

北海道物産展で販売する「じゃが豚」がメイン商品で、餃子や焼き小籠包など包む技術が特長の佃善さん。じゃが豚は累計3億玉も売れているとのことで、スケジュールが書いているホワイトボードには、一年間の催事予定がびっしり。素材は最大限北海道産にこだわり、物産展などの催事商品だけではなく、家庭でも美味しく食べられる新商品にも力を入れています。

北海道物産展では有名なのに、 北海道民にはあまり知られていない?

「百貨店の北海道物産展に足を運ばない方には、認知度が低いんです」と佃さん。今回、その認知度への課題からデザインコースに参加することを決めたそうです。また相次ぐ百貨店の閉店や変わりゆく時代に対応して、催事以外の販路拡大、自家需要向けに“食卓にならぶ商品開発”を目指していきたいとのこと。現在はスーパー向け商品として、餃子を開発中。ですが、「じゃが豚」「焼き小籠包」「餃子」と商品のラインナップとターゲットの整理があまりうまくいっていないのでは、と感じました。今回は「じゃが豚」というオリジナル商品を次の商品へつなぐための、ブランドポートフォリオ*の整理、そして会社の整理を進めていきました。

*ブランドポートフォリオ：企業が複数のブランド（今回の場合は商品群）を持つ場合に、それぞれのブランド（商品）のイメージや役割など関係性を整理して計画すること

ヒット商品からの展開に悩む

佃善さんの歴史をお話しいただきました。創業当初は北海道産の材料を使い、東京で餃子づくりをされていたそうです。材料が道産なので北海道物産展に出店し、全国を巡回する中で、材料だけではない本当の北海道発の商品づくりをしたいと考えるように。平成15年に本社・工場を北海道に移転されました。続けて商品や製法について詳しく伺いました。

じゃが豚の特長は、なんと言ってもつるんぷるんの食感。独特の食感のポイントは、試行錯誤のうえたどり着いた生地の配合です。また餃子も厚めな皮が特長。佃善さんは「包む」ところに技術を持たれている印象です。

佃さん、「ヒット商品があるからといって、次はここ、と見えているわけではないんです。北海道物産展の定番なんですが、北海道の定番にはつながらなくて…販路拡大ももちろんですが、地域に根差した企業になりたいとも考えています」と本音が。移転した背景も含め北海道で成長した企業なので、地元の企業になりたいという佃さんの気持ちを感じました。私たちが佃善さんに必要だと考えたことは「メーカーとしての顔つきを考える時の戦略」です。独自性があり売れている「じゃが豚」とこれから展開していきたい「餃子」の共通項、そして在りたい姿である「地域に根差した企業」をつないでいくストーリーを考えていく、ブランディングの方向性が見えてきました。

北海道の食文化をつくる会社として

私たちが考えたことは「じゃが豚をつくっている会社」ではなく「北海道の食文化をつくっていく会社」として認知してもらえるストーリーです。じゃが豚という“商品”ではなく、食卓にならぶためにはどうしたらよいか、“つくる”方向に転換していきました。そして、文化をつくりたいという大きなところに持っていくこと。「北海道点心」というキーワードを提案しました。じゃが豚に共通して、焼き小籠包、餃子と包む技術で広がっていくことができます。

「すごくしっくりきます。現状は、じゃが豚がメインになっていますが、北海道点心だと広い意味で売っていくイメージができますね」と佃さん。さらに、北海道点心が単なるキーワードにならないための戦略について考えていきました。提案したのは「北海道点心 三ヶ条」。北海道点心を定義することです。

[北海道点心 三ヶ条に向けたディスカッションから]

1. やっぱり北海道産素材使用は必要だと思います！北海道産素材を3つ以上使用する、とすると良いでしょうか？参加してもらいやすくするために、サブ定義にしても良いかもしれません。
2. 食感がたのしいこと、こだわりの生地で包むこと。食感で記憶に残るので良いですよね。
3. 北海道内で生産していることはどうでしょうか?北海道で包まれていること、大切にしたいです。

佃善さんの取り組みを出発点に、他の企業さんも一緒に取り組んでいけるような仕組みに発展していくと面白いと思っています。

事業者情報

社名	株式会社佃善
所在地	〒006-0004 北海道札幌市手稲区西宮の沢4条2丁目1番38号
創業	1985年（昭和60年）1月
代表者	会長兼代表取締役社長　佃 紀一郎
事業内容	『じゃが豚』の製造・販売・百貨店の北海道物産展での出店販売、カタログ通販・インターネット販売